「あれ、真っ暗ですね。街灯もついてない。ああ、なにやら頬に冷たい感触が気持ちいー」 「ちょ!? 倒れてる! 倒れてますよー!?」 ちょっとだけ、危なかったかもしれない。 |
「おお、柔らかくて助かった」 「私のお腹ぽよぽよ!?」 いい人達だ。本当に。 |
「簡単に言えば幽霊を浄霊する人「ひきっ」なんだが……シャマルさん?」 「なななななんですかー!?」 そこまで怖がらんでも。 |
「もしあそこで看護士の人に見つかってたら強制退去でしたよ?」 「その程度の気配は読めるので余裕で対処できます」 「そこ、誇るところじゃねーだろ」 いや全く、その通りだ。 |
「何、姿は獣でも、俺は俺だ。いつものように接すればいい」 「そうか。解った」 そうだな、いきなり変えられるものでもないしな。ましてや、喋る犬だし。気兼ねはしなくていいと言う事か。 |
「そもそも、この家で争いが始まったとしても、主ある限り甚大な被害など出るはずもない」 「いや、その前のシグナム達の暴走を止めてくれ」 「そんなものは初めから無理だ」 コノヤロウッ! |
「恭也さん、おもろいねんけど、それだけって感じやし」 「そ、それだけ……?」 や、ヤバイ。俺の人間的価値が実はディスカウント商品並に値引きされてるっ!? |
「ヴィータちゃん! 言って良いことと悪い事があるのよ? 恭也さんが役立たずの能無し野郎だなんて言っちゃいけません!」 「シャマルの方が酷ぇこといってるじゃねーか!」 「えぇ!?」 「気付いてないのかよ!?」 はは、あなたの印象これで完全に変わりましたよ? シャマルさん。 |
「むぅ、写真に取っておくべきでした」 「その場合、全力で斬り刻むのでよろしく」 「う、あきらめます……」 この人を調子付かせるとドジを発動するか腹黒な展開になるかの二択しかないので、さっさと手を潰しておかなければならない。 |
「お前が強くなれば、その分だけ主はやてを任せられるしな」 「……頼りなくて悪かったな」 「冗談だ」 色々言いたい事はあるが、ここは言葉を呑んでおこう。 |
「し、しどい……。傷心の女性を足蹴にするなんて……っ」 「ちゃんとソファーに転がしたでしょう?」 「そう言う問題じゃありません!!」 確かに。 |
「なあ、あの子は幸せになるよな?」 「――愚問だな。今よりも幸せになるに決まっている」 「……そうか」 その言葉を聞いて、俺は気付かず安堵していた。 |
「お兄ちゃん!?」 「なのは。一端、退こう!」 「でも、お兄ちゃんが!」 「あれはなのはのお兄さんじゃない!!」 「――――っ」 そんなこと、知ってる。 |
「俺の……部屋?」 そう、ここは俺の部屋だった。懐かしい感触の布団も、使い古した机も、年季の入った本棚も、天井に吊るされている照明も、全部見覚えのあるものばかりだった。 寸分違わず、ここは俺の部屋だった。 |
「お兄ちゃん、もしかしてずっと寝てたんですか?」 「らしいな。疲れが溜まってたんだろ」 色々あったからな。昨日、と言うかもう一昨日か。あれから間断なく騒動が降りかかってきた訳だからな。イレインとそのオプションと戦った時より連戦だった気がする。 |
|
|